とてもまじめな「君の名は。」考察 -パンチラと和解せよ- (※ネタバレ注意)

君の名は。見ました。

 

見ましたが、見ていて「えっ!?」ってなりました。

これ絶対に私だけじゃないと思うんですが、ほら、あのシーンです。

終盤のシリアスシーンに描かれる……突然のパンチラ!!!!

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いやまあとりあえず「なんか唐突だけどありがとうございます!」って叫びましたとも。

実際あれは神様仏様新海様に感謝を捧ぐべきシーンだったと思います。

 

それにしても突然のパンチラだったなぁ……と最初は真に受けていました。

 

しかし鑑賞後によくよく考えてみると、あのパンチラは唐突でも何にもないことに気付きました。

あのパンチラは「君の名は。」の主題ともいえる重要な要素に多かれ少なかれ関わっていたのです。

重要な要素、それは――

 

セックスです。

 

セックス。

それは「君の名は。」という映画の最も称賛すべき部分であると思います。

セックスの描写が禁じられたアニメという枠組みにおいて、しかしながらセックスを描写しないことには真に男女の恋愛を描けないという矛盾――それをこの作品は見事打ち破って見せたのです。

 

さてセックス。

この作品におけるセックスとは何か、言うまでもありません。

 

瀧くんが三葉の口噛み酒を飲むシーンです。

 

まず口噛み酒というアイテム。

これは序盤からしっかり「人前ですることではない」「顔写真をつけたら売れる」など、禁忌的でかつ性的な意味合いを持つものであることがしっかり描写されていました。

えっちですね。実際あの生成シーンで「飲みたい」と思わなかった男性視聴者はいないと思います。

 

次に、あのご神体の場所。

幽世という、現実から少し離れた場所にある、他人の目の届かない暗室。まあもってこいの空間です。ラブホです。

何よりも一葉さんの言う、「ここに来たら一番大切なものを置いていかなければならない」

そう、三葉は乙女にとって一番大切なもの――処女を、あの場所に捧げてきたのです。

 

そして飲酒という行為。

酒を飲むという大人の、大人になるための行為、特に未成年である瀧くんにとって、さらにそれは禁忌的です。

禁忌的な大人の行為、つまりセックスです。

あのシーン、見ていて妙にドキドキしませんでしか? だってあれはもうセックスなのですからそれは当然です。

 

 

ということで。

瀧くんが三葉の半身である口噛み酒を飲むことで、ふたりのセックスは成立しました。

 

 

とまあ振り返ってみれば、このセックスシーンに向かって数々の描写が重ねられていたわけで、このシーンこそが「君の名は。」の本質であるといえるでしょう。

セックスの一点にフォーカスを絞って、107分をかけて濃厚に描写を重ねた作品、そりゃあ衝撃的です。大ヒット間違いなし。

っていうか新海誠、変態です。

 

 

さてセックスセックス連呼するのもアレなんでパンチラの話に戻りますが、あのシーンがセックスだとすると、シリアスシーンに現れたパンチラの意味も見えてきます。

セックスを経て処女を失った三葉は、純潔である必要がなくなったのです。

そう考えれば、なるほどパンチラが解禁されるのもさもありなん、あのパンチラは「事後である」ことの象徴的な描写だったといえます。

セックスへ至る「君の名は。」という映像作品は、事後もきちんと描いていたわけです。

髪を切ったという三葉のビジュアル的な変化も、単に劇中で語られた通りだけの意味ではなく、要するに非処女としてのシンボルだったのだと。

 

 

作品が全体を通してセックスの直喩にして暗喩だったことを考えると、新海誠作品に合ってるのか分からなかったRADWIMPSの楽曲も、なるほどぴったりなのかもしれないと思えてきます。

ロックバンドの楽曲に「恋愛を綺麗事みたく歌ってるけど結局はセックスするんだろ」と思ったことはありませんか?

それこそが徹底的にセックスを暗喩する「君の名は。」の世界観であり、よってRADWIMPSはぴったりなのです。

 

 

要するに「君の名は。」はセックスアニメをあたかも純愛青春ドラマ風に仕立て上げた傑作なのです。

あるいはマイルドに言うと、セックスなしに男女の恋愛を描き切った作品なのです。

つまりは綺麗で本質的で、オタクにもリア充にも楽しめる映画、それが「君の名は。」なのです。

すごい。

 

 

オタクよ、パンチラと和解せよ。

 

 

(おわり)