うろ覚えのラブライブ!サンシャイン!!の感想(二年生編)

※アニメを見て僕はこう解釈した、という話なので二次創作程度にお読みください


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本家とサンシャイン、どこが一番違うかといえば、それはもう人間関係のドロドロだと思います。
その最たる二年生組の人間関係こそサンシャインの一番の見所といっても過言ではないでしょう。


なので過程をすっとばして11話の話から入ります。



プール清掃の後、梨子が抜けた穴をどうするかという話題にとなり、そこで果南が梨子の代役に曜を指名します。
関係ないけどここの「ん? えっ? ん? えっ……えっ!? 私!?」好きです。
それとないメンバーの総意で曜に決まったようにも見えますが、その後のシーンで鞠莉がスクールアイドル部創設メンバーについて驚きを見せたように、果南以外のメンバーは二年生組の人間関係への理解は浅く、同じ二年生で仲も良いからといった程度の理由で曜を選んだのだと推測され、やはり直後の「曜なら合うと思ったんだけど」のセリフからも果南が率先して曜を推薦したと考えるべきでしょう。実際、果南が二年生組に対して非常に近い距離にあることは加入前も加入後も何度か描かれていました。


しかしところがどっこい曜と千歌の踊りは合いませんでした。
曜のアドバイスをきっかけに上手く踊れるようになりますが、その会話では、千歌の「どうしても梨子ちゃんと練習してた歩幅で動いちゃって」という発言に対して、曜は「梨子ちゃんと練習してたとおりにやってみて」という一見的外れなアドバイスを送っています。この文字上の不一致は、それだけ曜が千歌のことを見ている、理解しているという描写でしょう。
踊りが合わなかった原因としては、曜と一緒に何かしたかったというのが千歌の想いが空回りして踊りに影響を与えていたと考えるのが妥当でしょう。梨子と二人で練習した動きは二人だけのものにしたかったというちかりこ過激派思想で考えることもできますが、そこは宗派の問題です。



さてその後、鞠莉との会話シーン。
「千歌っちにも梨子にも話せないでしょ」という鞠莉の発言を否定することなく、曜はぶっちゃけトークを開始しました。大好きはもう隠さない。

こことの対比となるのが、翌晩の曜と梨子の携帯での会話です。
「千歌ちゃん、前に話してたんだよ」と始まる、梨子の口から聞かされる千歌の本音。
曜にとっての千歌への想いは、千歌にも梨子にも話せるものではなかったにも拘わらず、千歌の曜への想いは、梨子には明かされていました。
8話で曜が問いかけた「悔しくないの?」「やめる?」に対する千歌の本音が、曜ではなく梨子の前で語られたように、千歌にとって本音を明かせる相手というのが、いつの間にか曜から梨子になっていたのです。



10話では梨子の小さな変化に気付く千歌と、そんな千歌の様子に気付く曜が描かれ、引き続き11話でも曜の千歌への観察眼の鋭さは描かれました。
しかし千歌から曜への観察眼の高さは一切描かれていません。

にも拘わらず、曜の家の前で千歌はこう言います。

「曜ちゃん、なんかずっと気にしてたっぽかったから、居ても立ってもいられなくなって」

嘘です。
そっと袋に戻したみかんアイスや、梨子からのプレゼントを見せる時の描写……千歌は明らかに、曜の様子に気付けていなかったのです。
このセリフを語る千歌は、どこか誤魔化すような表情をしていて、しかも言った後には曜の反応を伺うように、ムッとした表情を見せます。誤魔化すような表情はただの照れ隠しとも解釈できますが、一切偽りのない本音の言葉であるならその後に難しい表情は見せる理由がないのです。
千歌の言葉が嘘であるという推測を肯定的に考えると、直前に二階の曜に向けて千歌が放った言葉が妙に台本調だった理由も見えてきます。ちょっぴり嘘だからです。
もちろん曜の気持ちを知ったことによって千歌が「居ても立ってもいられなくなった」というのは本音だと思いますし、それは汗だくになりながらも曜の家に飛んできたという行動にも反映されています。しかし先程のセリフの前半部分。千歌は曜の気持ちに気付いていたどころか、気付けていない描写ばかり重ねられていていました。やはりそこは嘘なのです。

では曜に対して鈍感だった千歌が、突然あんな気のきいたことを言えたのか……というと、曜が鞠莉にアドバイスをもらったように、千歌も誰かからの入れ知恵を受けたのだと推測できます。っていうか果南です。果南が11話の黒幕です。多分ね。

黒幕果南説の根拠としては、まず2話で二年生組が海の中で「想いよひとつになれ」のメロディを聞いたシーンに居合わせていたのは果南ですし、10話の千歌と一緒に梨子の部屋に上がるシーン、11話の生徒会室のシーンなども根拠に挙げられます。
10話の梨子の部屋のシーンは果南と二年生組の関係を考える上で重要なシーンで、つまりここで果南は千歌と梨子の関係性を把握する機会を得たわけです。
メタ的な発想でいけば、あのシーンの10話としての役割は千歌に梨子の部屋の楽譜を見せることなので果南が同席する必要はなく、また「想いよひとつになれ」に関しては千歌が作詞担当なので、単に梨子の部屋に千歌を上げるだけならそれを口実にすればいい話だったわけですが、そこに果南を挟んだのは、11話に向けて果南を二年生の人間関係を理解する立ち位置にするためだったと考えることができます。
つまるところ、11話で千歌が曜の家に向かったのは果南の差し金だった、というのがここの解釈です。



さて、曜はその後千歌に泣いて抱きつくわけですが。
その構図は恋になりたいAQUARIUMで千歌が曜に泣いて抱きつく構図と全く一緒です。
曜が千歌にぶつける本音を考えるシーンでうちっちーの着ぐるみを着用していたり、また12話の冒頭で曜がイルカの置き物を見つめていたりと、この話では「恋になりたいAQUARIUM」を強く意識した描写が見られます。
ようちか回なので「恋になりたいAQUARIUM」を踏襲すること自体は極めて自然ななりゆきなのですが、ここで11話のタイトルを思い出してみると「友情ヨーソロー」なのです。
恋と友情は対義語として用いられることも多いのですが、それを踏まえて11話を思い出します。

壁ドンしながら「私と梨子ちゃんどっちが大切なの」
木の下で「千歌ちゃん、私のことあんまり……好きじゃないよね」
みとしーにて「私、渡辺曜は、千歌ちゃんのことが全速前進ヨーソロー」

……どう見ても、友情じゃなくて恋です。恋なのです。
これらのイメージは直後に曜自身が否定、つまりその想いが恋であることは曜自身が否定するわけですが、そんな曜の感情を表現する言葉があるとすれば――それは「恋になりたい」に他なりません。
恋になりたい、それが渡辺曜なのです。

そんな曜ですが、梨子から千歌の本音を聞かされて、そして汗だくで駆けつけてくれた千歌に触れて気付きます。
千歌にとって梨子が本音を話せる友達であったように、自身もまた千歌にとって一緒に何かをやりとげたい大切な友達だったのだと。
もしそれが友情でなく恋だったなら、梨子が一番で曜が二番で……あるいはその逆であったりと、そんなことがあるかもしれません。しかし友情には順位はなく、千歌も梨子も曜もお互いに大切な親友なのです。

千歌と、そして梨子とも、こんなにも深い友情で結ばれているのに、恋になりたがった愚かな自分自身を、曜は「バカ曜」と称したのです。

そんな曜の恋になりたかった事情を反映したと思われるのが、11話の「ユメ語るよりユメ歌おう(歌:渡辺曜)」です。
11話の内容を考えれば、EDは当然、千歌と曜のデュエット(または二年生トリオ)であるべきなのです。10話では千歌梨子が仲良くデュエットしていたのですから、今度は曜の番です。
なのに11話の「ユメ語るよりユメ歌おう」はデュエットではなく、曜のソロだった……というのは、つまり恋になれなかった渡辺曜なのです。


曜と千歌と、そして梨子も含めて、これまで以上に「友情」を深めることができた、それがサンシャイン11話「友情ヨーソロー」でした。




さて内浦を離れている間にちゃっかり千歌の元鞘を回避していた梨子ですが、そんな梨子も13話にて千歌との間に想いの齟齬が発生します。

夕暮れのプールサイドでクラスメイトがAqoursへの加入を申し出るシーン、梨子だけが少し戸惑いの表情を見せていました。
その表情の意味が新規メンバー加入への抵抗なのか、それとも大会規約に反すると知っていたからなのか、このシーンではどちらとも取れて、判別が付きにくいところではあります。

その夜の窓越しの会話でも、噛み合いのズレを見せます。
「できるの?」「うん」
梨子が喰い下がりかけた様子を見ると、エントリーしていないメンバーがステージに上がれないことをこの時点ですでに知っていたことはほぼ確実でしょう。
つまるところ梨子が口にした「できるの?」とは大会規約についての話だったわけですが、それに対する千歌の返答は「うん」……さながら曜に「やめる?」と発破を掛けられた時のような返答です。もちろん梨子の質問の正しい答えは「できない」です。
煽られて燃える千歌らしい誤解ですが、あの千歌と梨子の間でQ&Aが成立していないというのは大事件です。
この誤解には千歌の中にあった「本当にできるのか?」という気持ちにも一因があったと思われます。そこに梨子からの激励の言葉(誤解)……おそらく千歌は、梨子に背中を押されたように感じたことでしょう。千歌も梨子のことが大好きなので。
3話で曜から「なんでそんな言い方するの?」「こう言ってあげた方が千歌ちゃん燃えるから」と教えてもらっていましたし、千歌の反応を見て、梨子は自身の言葉の選択ミスに気付いたと思われます。
梨子にとって、千歌と曜のようなツーカーの仲は憧れだったということも、そのやりとりに齟齬があることを言い出せなかった要因の一つでしょう。
しかしすでに10話の時点で梨子と千歌は大好きの間柄になっており、あの10話を経た後で今更そんな齟齬が生まれるかというと、そこには別の原因があると見ることができます。

そのヒントとして考えられるのが、この会話の最中に現れた千歌ママとのやりとり――「美人だねぇ」「いやぁ、それほどでも……あるかな」です。
もちろん意中の相手の家族に美人と言われるほど誇らしいこともないでしょうし、全百合界隈に衝撃の走る梨子の返答だったわけですが、それはさておきます。
これと似たやりとりは2話でも千歌と志満姉の間で行われていて、この時は「美人さんねぇ」「さすが東京から来たって感じでしょ」と語られていました。
このことから「美人=東京の子」という置換が可能なことが分かります。これを踏まえると、千歌ママの美人評に対する梨子の返答が「Yes」だったのは、梨子の、自身が東京の人間であるという自覚と見ることができます。
これは12話にて梨子が語った「音ノ木坂が好きだった」と連動していて、つまり梨子にとっての母校は東京の音ノ木坂であって、内浦の浦女ではなかったということです。

12話の例の砂浜のシーンにてこれからのAqoursのありかた、自由に走ろうと千歌が語った時、他の6人は肯定的な発言をしていたのに対して、梨子と善子だけが中立的に「自由に走ったらバラバラになっちゃわない?」「どこに向かって走るの?」と発言していましたが、これはこの二人だけが「どこに向かって走るか」の意識を共有できていなかったと取ることができます。
なおこの梨子の質問に対する千歌の回答は「0を1にしたい」ですが、東京のライブで突きつけられた「0」に関しては、同じく12話で曜が「よかった、今度は0じゃなくて」と言っているように半ば解決積みの案件で、ここで問題になっているのは入学説明会参加者の「0」……すなわち浦女の存続についてで、それがAqoursの次の目標であり、梨子と善子が共有しきれていなかった部分です。
東京出身の梨子だけでなく善子もその立場なのか、という件に関してですが、善子は浦女の統廃合の話を聞いた時、最初は肯定的な立場にいました。統合したら中学頃の友達に会うことになると聞かされてから反対派に回りましたが、反対派の立場を取った理由としては消極的なものです。このシーンでは花丸も肯定派でしたが、これは都会に憧れるキャラクター性ゆえの発言であって、本音では肯定しながらも中二病のキャラクター性と個人的な理由ゆえ反対派に回った善子とは事情が異なります。
また13話で客席に現れたヨハネの言葉が「私の羽根を広げられる場所はどこ?」であったように、善子にとって浦女は自身の輝ける場所ではなく、そうして輝ける場所を探した結果がネット配信という行動に繋がっていました。浦女の魅力を伝えようというPV撮影でも「土!」ですからね。
このようにAqoursメンバーを浦女への想いの強さで順位を付けると、やはり梨子と善子が下からの二人になります。
だからこそ砂浜のシーンで、その想いを共有できていなかった二人は、目的の言語化を要求せざるえなかったのです。


梨子がAqoursに入る決意をしたのは、「決めたよHand in Hand」で歌われたように、千歌の熱烈なラブコールを受けたからであって、決して浦女ためではありませんでした。(そもそも梨子の加入時点では統廃合の話は出ていません)
13話の図書室のシーンでは準モブ浦女生が「学校存続させるためにやってるんだよね」と呟いていましたが、これは梨子(と善子)にとっては「No」なのです。
千歌に選ばれた、というのは梨子のAqours所属に特別意識を与えていたはずで、千歌が大好きな梨子だからこそ、千歌に選ばれなかったモブのAqours入りに複雑な感情を抱くのもやむなしです。なおメインメンバーについては加入に際し千歌のアプローチが先にあったので許されていると考えられます。
そのため、たとえ新規メンバーを迎えた方が浦女を存続に近付けることになるとしても、その加入を心情的に受け入れることができませんでした。

このAqoursに所属する動機の違いが、13話の窓越しのシーンの会話の不一致に繋がり、またそのズレを梨子が自覚していたからこそ、直前まで新規メンバーがステージに上がれないことを伝えられずにいたと考えられます。


結局この部分にはしこりの残る一期最終話でしたが、二期では浦女に染められていく梨子の姿を期待しましょう。




話変わって、13話でしこりが残るといえば、大会規定ガン無視でステージの近くに集まって来た浦女生についても挙げられます。
この行動は、「MIRAI TICKET」の中で千歌が観客席に向けた「みんな、一緒に輝こう」に対する呼応であることは明白です。図書室のシーンで準モブ浦女生が言っていたように、浦女生は千歌たちの輝きに魅せられつつあって、それが千歌の言葉で大きく動かされた形です。
「みんな、一緒に輝こう」
千歌のこの言葉は観客席の人に向けられた言葉でしたが、千歌にとって観客席とは、ただの場所ではありません。1話で遠く観客席から曜を応援する千歌が描かれていたように、観客席はかつての千歌の居場所だったのです。
観客席を離れステージへ向かうという動作。
それはかつて観客席が居場所だった千歌が、μ'sの輝きに魅せられて、現在はステージの上へと――ステージに駆け寄る浦女生の姿は、千歌自身の辿って来た道のりそのものなのです。
μ'sと同じ、人を惹きつける輝き。
これこそが羽根という形で描かれた、千歌がつかみ取ったものなのです。




こうしてAqoursは、ラブライブ本大会を待たずしてμ'sと同じ輝きを手にしましたとさ。

もう二期なくていいじゃないかな。



(おわり)